三上博史さんインタビュー

Art×Daily life

―芸術活動を始めたきっかけを教えてください。

ありのままの自分を表現したい

「何かをクリエイトしていきたい」、そんな想いをもって
10代の頃に役者としてデビューしたんですが、役者の仕事って、
実は自分が想い描いていたような「創造」とはかけ離れていて、
オリジナル性を追求するというより、自分の色をいかに消して与えられた役になりきるか、
そういうことが重要な仕事なんですよね。
それで、役者は仕事として没頭していたのですが、
やっぱり「ありのままの自分自身を表現したい」という思いは強くあって、
20代の頃にバンドを組んで詞を書き始めたのが、
本当の意味での芸術活動をスタートしたきっかけなのかなぁ・・・。
もちろん職業としてではなく、売れる・売れないは関係ない世界でね。

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太陽と月

僕は役者の仕事を「月」の仕事だと思っています。
役者の仕事は、やっぱり自分の色を出さずに、決まっている役になりきらなくてはいけないので、
自らの光を消すって意味なんですが・・・。
ただ、僕は自ら光を放つ「太陽」でもありたいと思っています。
「月」でありながら、同時に「太陽」であるということ。
自分自身の心のバランスを保つためにも、常に両者でありたいと思うようになりました。
詩の他にも脚本などに挑戦したこともありますよ。
とにかく、“モノをつくりだす”ということで自分が「太陽」となり、
役者として「月」になることで、生きていくことが前よりずっと楽しくなりましたね。

―現在、三上さんは陶芸をされていると伺いましたが、
  ご自身の作品について、三上さんが思う陶芸の魅力などを教えてください。

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身近でオリジナルなものを

30代になってからですかね。
あの頃、今となっては何に悩んでいたのか、
でも当時は真剣に何か悩むようなことがあって、
山に籠ったことがあったんです。
その時に土をさわり始めたのがきっかけですね。
ただ、僕は基本的に装飾としての「陶芸」よりは、
身近で活用できるようなものを
面白く作っていく「陶芸」が好きというか・・・。
「あぁ、こういう器があったらいいなぁ」
「こんな形のお皿があったらいいのに」という思いから、
作りたい作品のイメージを決めていくことが多いです。
陶芸の歴史は長く、今から全く新しくて存在しない作品を
つくることはできないと思います。
でも、自分らしさというか、自分のアイディアを活かして
オリジナルで良いものを作りたい、といつも思っています。

 

キッチンはアイディアの宝庫

「次は何をつくろうかなぁ」と考えている時が一番ワクワクしますね。
僕はよく、散歩中やお風呂に入っている時に考えることが多いのですが、
なんか、凄く良いアイディアやイメージが浮かんだ時とか、もう「面白い!」って本当に思うんですよね。
ある時期、ちゃんこ鍋にハマっていたことがあるんですけど(笑)。
その時に、どうも自分が気に入る取り皿というものがなくて。
ある時、ふと、胡麻もすれて普通に取り皿としても使えるものを作ってみようと思ったことがありまして。
あの胡麻をする部分の形状をどうやって入れようかなぁ・・・と、フォークで形付けを試してみたりしましたね。
結局、これに関しては、クシを利用したんですけどね。
でも、何か使えるものはないかと、よく自宅のキッチンをウロウロしています(笑)。
なので、こだわりの道具とか材料なんかも特にあるわけではなく、
それも作りたい作品のイメージが先行で、後から揃えていく感じです。

―今後、他に挑戦してみたい芸術活動はありますか。

書で遊ぶ

ん~、そうですね・・・僕、絵はダメなんですよ。
小さい頃、兄と絵を描きに近所の丘に行ったことがあるんですが、
兄は凄く上手に遠くに見える海とか建物を描いていたのに、
僕だけは、そこから見えもしない池を想像で描いちゃったりして・・・。
その絵を見た兄に、「お前、なんだよ、これ」って
言われて以来、もう絵は描かないと幼心に誓ったんです(笑)。

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あ、最近、面白い遊びみたいなものは見つけました。
僕は習字を長く習っていて、
実は師範免許も持っていたんですよ。
まぁそういうこともあって書道には興味があったので、
最近、少し初めてみたんです。
ただ、最初はやっぱり「何を書いたらいいのかな」なんて。
よく、「夢」とか「希望」とか小さい頃に
書いたりしたじゃないですか、
そう思って久しぶりに書いてみたんですけど、
やっぱり何かしっくりこない部分があって・・・。
ある日、仕事から少し疲れて帰った時に、
墨を用意して半紙を目前に精神を集中させたんです。
何を書こうとかそういう余計な概念を忘れて、
自分の内から出る感情を表現してみようと思って。
そして、いざ、筆をもって半紙に
落とした瞬間に書いた文字が「怒」。
何だか自分でも可笑しくて、笑っちゃいましたね(笑)。

 

筆を墨につけてから半紙に落とすまでって凄く緊張するし集中もするじゃないですか、
そして出てきた言葉が凄くネガティブな言葉で。
でも、考えてみたら、人って普通に生活をしている中で
そういったマイナスの部分はあまり見せないと思うので、面白いと思いましたね。
それからは、自分の内面を出すという意味での浄化作業のように、色々な言葉を書いています(笑)。

―最後に、この「おとなの芸術村」の読者にメッセージをお願いします。

日常生活での芸術

芸術はどこにでも転がっていると思います。
日常生活の中でも芸術に触れる方法は沢山あります。
自分で作るのもよし、鑑賞を楽しむのもよし、集めるのもよし。
僕は、心に残る思い出や経験なども結果として素晴らしい芸術だと思っています。
どんな形でもいいと思います。
人生の中で、芸術という不必要なもの(もちろん良い意味で)を取り入れていき、
余裕を楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。

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下町ロケット

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